今年開催されたWBCも大盛り上がりでNPBだけでなく、MLBへの関心が高まっていますよね。
素晴らしい記録を残す名ピッチャーが多くいる中で、MLBには「どうしてこのフォームで投げられるの?」と感じるような、日本では見ることのできない変則的なフォームで投球をするピッチャーが多くいるのです。
今回は、MLB投手の独特すぎる変則投球フォームを2つ紹介していきます。
目次
幻の2ステップ投法 カーター・キャップス

右腕投手であるカーター・キャップスの2ステップ投法とは、軸足をツーステップのように前方に移動させながら投げる投球フォームです。
「ホップステップ投法」「ジャンプ投法」と呼ばれることもあります。
この投法はセットポジションからスタートし、通常の投球動作のように左足を前に出すところから始まります。
このまま投げるかと思いきや、左足が地面につく直前に軸足である右足をプレートから外し、ホップ・ステップのような形で2回前へ進んでから投球するのです。
どうしてそんなフォームで投げるのかというと、打者が感じるボールの速度である体感速度が速くなるからです。
2ステップ投法は、普通の投球動作で投げるときより、投球板から実質40〜50cmも前に出て、打者に近づいて投げることができます。
そうすることにより、打者は球をより速く感じるのです。
2015年のキャップスの平均球速は約157.5km/hなのに対し、体感速度は約163km/h…
8km/hは打者にとって非常に大きな差ですよね。
つまり、彼は2ステップ投法により、打者の感じる球の速度を速めることに成功したのです。
キャップスは、2012年にニューヨーク・ヤンキース戦でメジャーデビューしました。
最高球速161km/hの速球とナックルカーブを武器として、高い奪三振率を誇っていました。
2015年には、マイアミ・マリーンズで30試合に登板し、1勝0敗、防御率1.16、31イニングで58個の三振を奪い、華々しいブレイクを果たし、16.8という奪三振率を残しました。
このような結果を残し、2015年にキャップスが話題になったとき、この変則的な投球フォームはルール違反にあたるのではないかという議論が起こりました。
しかし、MLB機構は彼の2ステップ投球について、垂直にジャンプしているのではなく前に跳んでいることから不正投球ではないと判断しました。
投手がプレートに足をつけていなければならないのは牽制をするときのみで、打者に向かって投げる限りは問題はないという見解のようです。
このように、キャップスの2ステップ投法はMLBで認められたのです…
2015年までは…

NPB審判部元副部長五十嵐氏によると、米国ではルールブックに記載されていない事項に関しては、選手のクセを尊重する文化があるそうで、このような文化があるからこそ、MLBでは変則的で独特な投球フォームが生まれやすくなっていると考えられます。
キャップスは2016年シーズン前に右肘靱帯再建手術を受け、シーズン途中にサンディエゴ・パドレスへトレードしましたが、2017年にパドレスのクローザーの座を狙い、復帰しています。
2015年の議論を経ても、MLB機構により不正投球とされなかったためか、2017年のキャップスの投球フォームは、2歩目のステップが少し大きくなっているように見えます。
しかし、この2ステップ投法は2017年のルール改正で不正投球とされたため、今では見られない幻の変則フォームなのです。
新しいルールは、「投手は投球モーション中に本塁に対して、両足や軸足などによる2歩目のステップをすることができない」「1人以上走者が塁上にいたら、ボークとコールされ、走者がいなかったら不正投球とみなされる」というものです。
このようなルール改正があり、キャップスは投球フォームの変更を余儀なくされました。
キャップスを封じるためのルールとも言えるかもしれませんね。
独特すぎるサイドスロー投法 パット・ネシェック

右腕投手であるパット・ネシェックは、小さいテイクバックのサイドスローから速球を繰り出します。
もともとはオーバースローで投げていましたが、ショートを守っているときに負ったケガが原因で、この独特なフォームのサイドスローになりました。
そして、ケガが治った後も、この投球フォームが身に染みたため、投げ方を変えることはありませんでした。
ネシェックのサイドスローはソフトボールのような構えから、変則的に球を投げるため、打者はタイミングをとるのが難しいという特徴があります。
MLB公式サイトの動画コーナー「Cut4」の特集記事は、ネシェックのサイドスローについて、「楽譜を持つように両手を前に出した状態から投球をはじめ、腕を後ろに振り上げる。戸惑う打者からスライダーやシンカーで三振を奪う。」と解説しています。
この投球フォームのメリットは、右打者が球の出所を見極めるのが難しいことです。
そのため、ネシェックは右打者に対して抜群に相性がいいのです。
このようにメリットがある一方で、腕に負担がかかるというデメリットもあります。
パット・ネシェックはアメリカ合衆国ウィスコンシン州マディソン出身の右腕投手です。
2006年ツインズでメジャーデビューし、最高球速は153km/hで、先発でもクローザーでもなく中継ぎ一筋で、スライダーやツーシームが得意な選手でした。
そこから、アストロズ・フィリーズ・ロッキーズなどのチームを転々とし、プレーしました。
ネシェックの通算防御率は2.79で、MLBで200イニング以上投げたリリーフ投手の中で17位に位置します。
11シーズンでメジャーの打者はネシェックを攻略できていないと称されるほど、打者が対応するのが難しい投球フォームなのです。
また、ネシェックは2017年に開催された第4回WBCのアメリカ代表にも選ばれ、アメリカの決勝進出に貢献しました。
彼は準決勝の日本対アメリカ戦で左打者の筒香を封じるために登板し、右打者に強いネシェックが左打者を相手に登板しましたが、打者が初見でこの投球フォームから繰り出される球に対応することは非常に難しく、筒香を打ち取ることができました。
2017年に37歳となったネシェックですが、年齢による衰えを感じさせないピッチングを披露し、リリーバーランキングでトップ10入りしました。
2017年シーズンでは、71試合、5勝3敗、防御率1.59を記録しました。
これほどの成績を残せるのですから、相当打ちづらいフォームなのでしょう…
いかがでしたでしょうか?
このようにMLBには、日本では見られないほど独特で変則的なフォームで投球をする選手がいます。
強打者がたくさんいるMLBで、いかに打者に打たせないか、打者を打ち取るかを考え、工夫をした結果、投球フォームが変則的になっていくのです。
そして、そのフォームがルール違反となるか否かも時代とともに変化していきます。
投手の投球フォームにも注目しながら野球観戦を楽しみたいですね。
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